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エンジニア 求人の内部、限定公開

電機メーカーの中には、過労死防止のため、自動的に出退勤を記録して実働時間をつかむシステムを開発し、社内でもそのシステムを利用しているところもあったが、YMさんの会社はそんな動きには無関心だった。
実働時間を申告すれば「生産性が低いから長く働いている」と評価を下げられる。 そのため、同僚たちは、自主的に短い労働時間を申告する。
とはいえ、サービス残業をいくらこなしても評価が上がるわけではない。 上司には退職や転籍の対象者をつくるノルマがあるらしく、長時間働いても「ボトムテン」に仕分けされ、退職を勧められる人が出た。
そんな会社のやり方に、YMさんは逆にファイトを燃やした。 降格で減らされた賃金を、残業を正確に申告して取り返した。

会社は、上司への評価制度も導入していた。 上司は「低い評価をすると他の部署からやる気のないチームと思われる」と、低い評価をつけないよう部下たちを牽制した。
同僚たちは腹に据えかねて、一斉に上司に低い評価をつけた。 それでも、その上司は昇進した。
「目標を達成しても賃金は現状維持、達成できなければリストラで、士気は下がる一方だ。 下からの声を吸い上げると称する制度も形骸化し、やっていることは人件費減らしだけ。
これが効率経営なのか」とYMさんは首をかしげる。 かつて人気企業のランキング入りを続けていたこの会社は、ここ数年、ランクから姿を消した。
会社は取材に対して、「社員に対しては適正な評価をしている」と話す。 雇用保障の代名詞のような「正社員」だが、非正社員急増の下で当たり前になった「働き手は使い捨てでいい」という発想は、正社員の職場まで変えつつある。
「肩書きは正社員でも実態は使い捨ての「なんちゃって正社員」が増えている」と、首都圏青年YuのKM書記長は言う。 二十四時間営業のコンビニチェーン「SQ9」で働くShさん(二十八)が、同Yuに駆け込んだのは、○七年のことだ。
高校を卒業し、フリーターを続けていたが、フリーターが「ワーキングプア」の温床になっていると聞き、将来が不安になった。 安定した正社員になりたい、と就職雑誌やハローワークなどで仕事をさがすうちに、○六年秋、同社の「正社員募集」を知った。
「これで正社員になれる」と、うれしかった。 だが、そんな安心は束の間のことだった。

最初は店長の下で正社員として働き、入社九カ月でいきなり店長になった。 「店長」の響きが少しうれしかった。
だが、入社から一年の問に次々と異動命令が出て、六店舗を転々とさせられた。 どの店も、正社員は店長だけで、後はパートとアルバイトだった。
就業規則では勤務は午前八時〜午後五時とあったのに、夜勤のバイトが集まらないときは店長が穴を埋めろといわれ、二十四時間連続で働いて数時間帰宅し、また出勤ということも少なくなかった。 店のパソコンに記録されたSさんの労働時間は、入社した翌月の十月が一八三・五時間、十一月は二○○・五時間、十二月は一九二・七五時間、○七年一月は二二○・五時間と、毎月二百時間前後。
パートやアルバイトが見つからなかった同年五月は三二〇時間、六月は三○二一時間、八月は二一四二一・五時間と三百時間を超える月も続出し、年三千時間を超えた。 それでも年収は約三百万円。
父母の家に同居しているからこそやっていけるが、一人暮らしで家賃を払ったら、食べていけない。 実態の通りに残業代が出ればそんな賃金ですむはずがない。
だが、会社は「管理職には基本給と管理職手当てを支払うことになっており、手当てにすでに残業代が含まれている」と言うだけで、働いた分の残業代は払ってくれなかった。 こうした労働条件に、周囲の正社員の半分程度が、毎月やめていく。
○七年春には、「目標未達なら賃金を下げる」との成果主義導入案が出た。 とたんに大量退職が出て、会社は案を撤回したと、先輩店長から聞かされた。
頭が働かなくなり、いつもぼうっとしている日々が続くようになった。 ○七年秋、勤務の合間を縫って病院に出かけ、「過労によるうつ病」と診断され、休職に入った。

首都圏青年Yuに相談し、未払い残業代を求めて会社と交渉を始めた。 しかし、納得のいく回答はなく、○八年、東京地裁に提訴した。
この間の事情について会社の言い分を取材したが、会社側は「係争中なのでコメントは控えたい」と答えるにとどまった。 Sさんの例は、「店長」であることを理由に残業代も払わずに長時間労働を強いる「名ばかり店長」の典型例として、広く報道された。
「名ばかり店長」が注目されたのは○五年、NMdの四十代の店長、Thさんが、極端な長時間労働に体を壊し、家族生活まで損なわれたとして、会社を相手取って訴訟を起こしたことが発端だった。 「店長だから」と休みも十分とれず、息子に「お父さんは、ボクが死んでも葬式に出られないね」と言われたことが、Thさんの背中を押した。
労働基準法では「管理監督者」は労働時間規制から除かれるとされている。 「管理監督者」とは、会社の役員など経営に近い立場で働き、その分、高収入を保障され、自分で労働時間を管理できる働き手のことだ。
こうした働き手は自分で出退勤を左右できる権限を持っているため、労働時間規制から除くという趣旨だ。 これが、「管理職は労働時間規制の対象にならないので残業代は払わなくていい」と拡大解釈され、働き手に管理職の一肩書きを与えることで残業代の節約と無制限の長時間労働を求める会社が相次ぐことになった。

Sさんの例は、これまで働き盛りを対象にしたコスト削減策といわれていた「名ばかり店長」が、入社早々の若者の労働コスト削減にまで利用されている実態を、浮かび上がらせた。 正社員は病気休暇などの保障がしっかりしている、といわれてきたが、これも一部で危うくなっている。
外食チェーン店の店長だったITさん(仮名:四十四)は、店での長時間の立ち仕事がたたって足腰を痛め、○六年、配置換えを会社に求めた。 長時間労働でうつ病も併発したが、会社は「店長採用者を他の部署に移すのは難しい」と難色を示した。
個人加入できるYuに入って会社と交渉した結果、会社は事務部門に小さな机を設けたが、店長たちには「例外的な措置」と説明。 賃金も三割下がりボーナスはゼロになった。
そんな環境の中で、社内では○七年暮れ、過労で体調を崩すなどして、ボーナスを受け取ってからやめる店長が相次ぎ、急な人手不足になった。 一人当たりの労働時間がさらに延びる悪循環も起きた。
「「正社員」として募集しても、病気になったときの受け皿がなく、体を壊したらやめるしかない。 店長たちはそういう仕事だとあきらめて黙ってやめていく。
休めないから体調が悪化して長期の休養が必要になり、そうなったときには休養の場がない。 そんな職場でがんばれと言われても、だれも安心してがんばれなくなる」と、ITさんは言う。
病気になるほど過酷な労働を強いられながら、月収を労働時間で割ったら、最低賃金以下となった正社員もいる。 二○○七年四月、東京地裁。
全国展開する外食チェーンのフランチャイズ店の元店長、Iさん(仮名:四十三)は、生まれて初めて法廷に立った。 ○六年七月に退職し、未払い残業代や慰謝料を求めて経営者を訴えた。
「管理職とは名ばかり。 安く使うための方便だったのでは」。

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